nobody hurts

February 22, 2011

20110222 - silence (reversed)

逆逆編集。



 自分が、上記までの経緯のような、逆編集をされているような存在であると少年は考えることもできた。自分を逆編集している誰かを考え出し、その誰かを逆編集仕返しているという同時進行のロジック。



 ここまでのこの文章をまとめるならば、この文章は、この文章が書かれているものではなく、この文章が読まれているものではない何かを常に定義するために書かれる文章、ということになる。
 そのような表現はいささか正気にあらず、さもなくば逆編集のされすぎなので、客観的に理解および共感可能だと思われる詳細にまで前の段落を逆逆編集するならば、その記述は、少年と少女が出会い、少女の髪の毛はその一本一本が細いフィルムで出来ていて彼女自身の体験や様々な他の人々が彼女というものを思い浮かべるまでの経緯の印象がそれらに記録されている。そんな髪の毛を持つ少女と少年が出会ってしまう。本来ならば逆編集によってしかたどり着きえない彼女という存在が、何人もの人間に何重にも読み解かれた物語の不変量として発見され、そのように、本来ならば少年の世界に存在しなかったはずの少女は、今現にこの文章自体に対して行われている逆編集という手法を通して、いわば時代の記憶により捏造され、もしくは捏造された時代の記憶かそれとも捏造された現在として、彼の前に姿を現す。それで、少年の前を、少女が横切る。場所は新宿。彼女の名前はヒキガネーゼ。引き金のようなものとして、彼女はその引き金となる何かを引き、少年の形をした銃弾が少年を打ち抜き、少年のかたちをした風穴がそこに残る。風穴となった少年と、不在と実在を兼ねる少女の恋の話。きっとこれはそんな話だ。いつも通り。と書くといつも通りではないという意味になってしまうので、どう書けばいいのか分からない、ということになる。
 


 繰り返しになるが、この文章は典型的な逆編集の手法を用いて書かれている。つまり、この文章が書かれていないところに、もしこの文章が存在したらどうかという前提で書かれている。
 また、これも繰り返しになるのだが、逆編集とはごく一般的な編集の技法のひとつである。



 誰かに逆編集されたその余波として時代の片隅に生まれた自分としてその誰かを逆編集仕返している自分が、実際に自分の目の前にいる彼女の姿に自分の感傷を重ね合わせることにより逆編集を施しているという屈折した状況。
 まっとうな恋など発生しそうもない状況を、少年と少女の恋のはなしが生み出すとはいうのは少し興味深いと少年は思う。
 そんな話をして何になるのと、少年の目の前に座り煙草を吹かしている彼女がいう。彼女が、これから少年が言うであろう全ての言葉に対してそう言う。たぶんもう逆編集されたものなんて聞きたくなかったのだろう。というのは少年の憶測である。窓の外を沖縄の祭りの賑わいが通り過ぎていく。年に何度かそのような催しがあるのだ。
 二月の昼下がりである。
 そこに二月の夜の風景が重なっている。
 その瞬間、そのどちらかが少年の記憶である。
 少年にとってのそのどちらの瞬間も、彼女にとっては記憶ではない。
 囃しと呼んでもよいものなのか、ともかく沖縄の民謡を演奏する沖縄の民族楽器を演奏している団体が窓の外を通り過ぎていく。空は晴れている。二月にしては少し暖かい。だが寒い。
 あなた、わたしのこと逆編集してたんでしょ。と少女が少年に向けて言う。
 少年はそうではない振りをし続けるが、彼女には通じない。
 わたしはもうこんな自分がまるで逆編集の対象になったみたいな話し方をするのは、いやなの。
 彼女はそう言う。
 少年は同意する。
 でもいまはそれ以外の方法なんて思いつかないの。それがあなたのせいであると同時に、それはわたしのせいでもあって、でもその二つには直接的な因果関係がないから、わたしはこうして勝手に喋ることができる。自分がここで何を言わないかを常に想定していると、あなたに想定されていると、そう想定しながら、ここでの言葉を一つ一つ選びながら喋ってる。それがあなたたちが逆編集なんてものを考え出したことの弊害。もしくは逆編集なんてものが必要だとあなたたちが思い込むような結果を生み出した状況の弊害。でもそのせいにはしたくはないの。分かるでしょ。
 彼女はそう言う。
 まるで少年がそのように分かるような状況を編集するような手つきで。
 少年は分かったとも分からないとも言わずに、それを逆編集して、少しでも彼女の内側の虚構の姿に近づこうとする。
 彼女はそのことを理解している。彼女が、そのことについて諦めているのか、判断を保留しているのか、判断を保留するままに決めたのかどうかは少年には分からなかった。

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