20110226 - silence (breakdown)
意味よりも強い酒。
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雨が降らないねと少年が呟く。
雨が聞こえないねと少女が呟く。
僕には雨の音だけがずっと聞こえる、と少年が打ち明ける。
わたしには無音の雨だけがずっと見えてる、と少女が返す。
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ひさしぶりにどこかに飲みに行きたい気分。
女がそう言う。
そんな髪の毛でどこかに姿を現すつもりか。
と少年が指摘する。
意味よりも強い酒が飲みたい、と彼女が言う。
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実はわたしには同じ曲が違うように聞こえているような生活、もしくは違う曲が同じように聞こえるような生活を送っているのだけど、あなたはどうか。と少女が問う。
あえて言えば、静寂の対比物をずっと聞いている。音がなくなってもうねりが残っているような状態が理想。そしてその埋め合わせでないような音楽が聴きたい。そのような答えは誠実ではないと分かっているし、情緒的であるのかどうかすらも分からない。どちらかと言えば物事を情報として処理しているような気がする。でもそれを言えば君の質問の内容だって不誠実だと思う。少年が応える。
略すのは駄目か。少女が問う。
略して全体が見えるくらいがちょうどいいのではないか、と少年が不誠実に返す。
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わたしたちこれから出会うことがあるのかな。
少年の逆編集という思い込みに調子を合わせて、少女が問う。
その質問は一番聞きたいものでもあるし、一番聞きたくない種類の泣き言でもある。
少女の予想以上に冷静で、かつ、とちくるった回答が返ってくる。
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頭のなかの声をオンオフするスイッチが欲しい。それかその声に受け答えをする自分をオンオフするスイッチが欲しい。
と彼女が言う。女はいつの間にかカモミールティーを淹れて飲んでいる。
彼女は自分の肩をさすり、ほんの僅か残る違和感を取り除こうとしている。
冷静でとちくるっているのは、こいつも似たりよったりだな、とマッサージの手伝いをしながら少年は考えている。
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この髪の毛に収められた映画を観たことは一度もないんだ。
と特に言い訳じみた口調でもなく、少女がいう。
その映画を観ている人を君はいつも観てるんだろうけど、その人が観ているのはその髪の毛に収められた映画ではないんだろうね。そしてその人はその映画を観ていると信じている。と少年が返す。
あなたのように。と少女は言わない。
だからそれは絶対に観ることの出来ない映画という意味なんだ、と少年は付け加えない。
いわば二人の関係はそこでねじれている。
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完全な人間でないことに後ろめたさを抱く人はどんな人かしら。
と少女が問う。
不完全な人だと思う。
と少年が返す。
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真面目な話しをしていいかしら。
と少女が持ちかける。
冗談だろ。
と少年が真顔で受け止める。
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わたしはあなたが何かわたしに用があったからわたしに出会うことにしたのだと思っていたよ。
と少女が言う。
僕も君が僕に何か用があったから僕に出会うことにしたのだと思ってた。
と少年が言う。