20110306 - silence (interlude)
単調な雨。
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単調な雨のなか大地震のため倒壊した都市の欠片のヴァリエーションから構築された破壊と火災のパッチワークのなかに閉じ込められた「彼女」が夜明けを待っていた。同時にそれは夜の思い出でもあった。ずっと昔の大空襲の夜だ。「彼女」はずっと昔のその空襲の晩も、どうにか爆弾や火災から逃れて、当たり前のように川岸で夜明けを待ったのだった。「彼女」はその空襲の場面にも自分がいたことを知っていたし、今現在いるその震災の場面に自分が以前にもいた事があったと知っていた。雨が降っていて気持ちよかった。水たまりから地上に広がる虚空が顔を覗かせていた。少年が求めている虚空はきっとそれだけのものなんだ。
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それは銀幕に映写された「彼女」の姿だった。彼女もしくは「彼女」の髪の毛のフィルムを再生する映写機がことことと回っている。そのフィルムが再生されるとき、フィルムは彼女の映像が投影されている周囲の空間に二次大戦中のパリで見た小さな映画館を発生させた。それと同時に、そのパリの映画館が出てくる映画が上映されていた二十一世紀の東京のシネコンもそこに発生した。装置はことことと回り続け、「彼女」と、「彼女」にまつわる様々な映画館の記憶をその周囲に発生させ続けた。光線が差し、焦点がレンズから漏れた。焦点は液体のように漏れて「彼女」の姿形で滲んだ。「彼女」は彼女に似ていた。装置がことこと鳴っている音だけが本当に鳴っていたが、「彼女」を取り巻く環境音も「彼女」を映し出す液状化した焦点に含まれており、それは空気の振動とはまた別の方法で解凍されて伝わるのだった。
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少年が「彼女」を見つけ出したのは未だ都会として機能している都会の残骸のなかだった。その朝、深くまで落ちた青と熱のある赤が、色同士の境界線のうえで空を紡いでいた。熱は、凍った炎の色となり地平線を浸した。炎は氷が溶けるようにゆっくりと広がり、色が追従した。空は、欠片を求めて全体を変化させ、一度も止まらなかった。東向きの窓が「彼女」のお気に入りだった。「彼女」に言われるまで、少年はその窓が東向きだということに気がつかなかった。
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「彼女」を描こうとして、別の女を描き、なおも試みて、描線と塗料の雨が描線と塗料を洗い流し、配色図は残っているが、色が残っていない沢山の図版に、新たな輪郭を書く。
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逆編集者同士が「彼女」について話すときは、お互いが語っている「彼女」が果たして同じ「彼女」かどうかで揉めることがままあった。それを和解させるのはいつも「彼女」であった。「彼女」は感情の象徴であると激情に任せて口走ったものがいたが、その意味はまだ分かっていない。分かっていないだけで、意味はあるんじゃないかと少年は思っている。という文章を誰かに書かせるだけの意味しかなくとも。