20110316 - silence (on wednesday)
手がかりとしてあるもの。
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そのように、まだそこにないもの、これからもきっと存在しないであろうもの、もしかしたら存在したかもしれないものとの釣り合いを取ることにより、彼女は空の重心を測っていた。空の重心を測るというのは少年が勝手に口走っているだけの言い方で、彼女は無視していた。
無視されていた、というのは少年の思い込みで、実際には空の重心云々に関しては彼女は何も知らなかった。
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その手がかりは、それがそこにないこと。その手がかりは、その誰かがそこにいないこと。手がかりがあり、手がかりしかないもの。そのようなものを考えるのを彼女は好きだったが、少年が逆編集を用いて必至に介入しようとしている経験の純粋性というものよりかは、幾分かそれは実際的なものだった。それがそこにないのなら、それはそこにないことにより、それは常にそこにある、と感じられる何かを彼女は信用していたし、少年が彼女を信用する以上に彼女は自分を信用していて、そこにないそこにあるものたちについて少年に教えても無駄だろうな、と思考を形成する以前の勘、彼女に備わった本能のようなものが彼女に告げていた。少年はそれを逆編集と同一視し、納得することを選ぶだろう。もしくは、あるいは同時に、わたしがそのような徒労を選ぶだろう。それも考え過ぎだろうか。と、彼女はこの段落に書かれている全てを考える前に、ひとまず考えていた。
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手がかりがあり、それ以外の混乱が過去込みのセットでついてくる。手がかりと混乱は釣り合いを保っていて、混乱を深めれば手がかりは明晰になるのではないかと少年は勝手に睨んでいた。その手がかりというのは、結局は混乱の手がかりなのではと彼女に見透かされるような気がして、少年はそのことには触れなかったが、そのことを彼女は見透かしていた。すごい。と少年は思うかも知れない。さすが「彼女」だ、と。
今の少年にとって彼女は「彼女」の手がかりであり、そこに純然たる手がかりしかないことは彼女だけが心得ていた。もし少年が幸運であれば、彼女自身に関しても手がかりを得るところまで行けるかも知れない。あるいは手がかりとしてそこにあるものを。その時には彼女自身がその幸運でなければならない。
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彼女とともにいるとき少年は自分の幸運を信じることを彼女は望んでいて、それは「彼女」の望みではない。「彼女」とともにある少年にはその望みはきっと届かず、二人の関係はやはりそこでもねじれている。
届かずとも叶うものがあることを少年も彼女も知っていて、それによって叶う十全な何かが互いの望み通りの何かでないことにより、何を望んでいるかを知りもしないまま何かを望み続けることができるのだと、でもそれは望みがないってことでもないかと彼女は考える。少年もそのとき同じことを考える。それがどうした、と、そのどちらの事実に関してかは彼女自身分かっていないのだが、彼女は思うわけである。