20110320 - silence (on sunday)
一日の終わりみたいな何かが、一日の終わりを照らす。
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あるいは風の残骸を集めて部屋を組み立てる。自身を風の残骸だと自惚れと自己憐憫を兼ねた感情を少年はもてあそぶ。風の残骸でできた光景を吹き抜ける風の後ろ姿を、その横顔として覚える。ある風が寄せて、彼女の部屋を組み立てるまでの経緯に少年は思いを馳せる。そこで観測される風の一部分は、かつては夕暮れの優しい光りをくぐっていたものであり、ポットから湯気を立てている珈琲の匂いをくぐり、芝生に濡れ、彼女の襟元で溶けた。少年の手元に残骸として残っている風が渡っていた夜もそこにあり、夜から夜を渡る風もあれば、夜から朝へと繋がる風もあり、朝焼けと黄昏を見間違えた風のなかで花冷えと陽気が互いを呼び間違えている。風の残骸ではないものも、手にとれば、それを部屋の部品をして増改築を行う。部屋として閉じたあとも、なお風が吹き込むように、まずは窓を最初に造り、そして窓を最後まで残す。
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時間みたいな何かが過ぎて、そこで過ぎたものを時間だと証明する作業を少年は同時に進めていた。それが時間であることを証明しようとしているあいだにもとにかく時間は流れるのだし、そこから導き出される教訓は今更であり、あまりに有り触れている。それならば、あまりに有り触れているということを教訓にして、少年は中断していた作業にふたたび取りかかる。あるいは自身に教訓を用立てたということを教訓にして、それでもなお教訓を必要としていることを教訓にしながら、あるいは効率的に教訓を製造するだけの日々に没頭したのちに、効率的に教訓を消費する日々に明け暮れ、言葉が溢れて、一日よりも長くなり、振り返っても未来しか見えないみたいなちゃちな幻想が少年を甘やかす。
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風みたいな何かが吹いて、隙間を賑わす。春の始まりの一日みたいな一日が彼女の部屋で過ぎていて、一日に含まれる一日みたいな一日と実際の一日のあいだを揺れ動きながら、印象が育ち、三食が済まされ、どちらの一日の終わりか分からぬ一日の終わりみたいな何かが、一日の終わりの町を照らしている。
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あるいは、一日の終わりみたいな何かを組み合わせて、一日を組み上げる。
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そのようなことをしたくなるのは一日の終わりなのだが。
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自分は長いこと夕焼けを見ていない、と彼女は思う。その割には、中天にかかる太陽を見たという記憶は薄く、どちらかと言えば夕焼けに差し掛かったオレンジ色の太陽ばかりをこれまでの人生で見てきたという感想を抱くが、それにしてもいつも思い出すのは凡庸な角度で照らす凡庸な太陽が浮かぶ凡庸な空だった。何でも起こりそうな凡庸さが砂埃みたいな日光を受け返しながら光りの底に沈み、線路沿いの道が彼女のこちらがわから向こう側へと伸びていた。これはどの線路沿いの道だろうか。その道を挟んだ線路の向かいには幾棟かの背の低いビルが並び、時に建築に疲れた空間の隙間を路地が破って見知らぬ坂道を遠くで上っていく。自分は夕焼けを見て一日を終わりを感じたいんだな、と彼女は納得することにする。もっと遅い、宵の口に差し掛かる時間にふとその一日を振り返る瞬間を試すのではなく、夕焼けを見ながらそれを何かの合図として捉えるような儀式を自分はしたいだけなんだろうな、と彼女は納得することに決める。何かの合図で夕焼けが発生するのではなく、また夕焼けを発生させるような何かの特別な合図でもなく、感情のための素朴な合図が欲しかった。そして、実際に夕焼けをみても満足をしないわたしの部分はどのようなものだろうかと彼女は考えた。