nobody hurts

March 28, 2011

20110328 - silence (all night long)

眠りのように過ぎる夢。



 少年は口を開けないまま思う。彼女の夢はまるで眠りのように過ぎていくのだろう。彼女は眠りながら眠るのだろう。それとも眠りながら眠るのだろう。たぶん目はつむって。たまに口をあけて。



 少年は思う。まだ過ぎてない一日、それもまだ訪れてもいない一年のある初春の、まだ覚えられても忘れられてもいない午後を過ごしている彼女の部分、予測による注釈や編集の野暮の及ぶ先で、この物語を遠くから眺めて、それを覚えることも忘れることもやはりしないまま、それはあるいは天気予報が八卦を眺めるような感じで、彼女の視点からみれば、幻のなかで流れっぱなしの映画みたいな物語が過ぎようとしている。初春の午後が、幻のようなのか、それともそれが映画のようなものなのか、そのようなことを彼女は当然考えていない。と、思う。



 少年は思う。幻覚を幻覚でないものから見分けることが出来るのだったら、それは幻覚とは呼びようがない。けれども片目で幻覚を見たまま、もう片方の目で現実を見て、両目で何か別のものが見えたりしないだろうか。よりひどい幻覚だとか。自律的な幻と衝突しないように生活を続け、いざぶつかった時には、自分の方が幻だったんだって思うくらいに、呆然として、白けて、落胆を感じる前に前にそのことに対して意外さを感じるほど傲慢であったことにもついでに気付いて、その謙虚さだけを言い訳の種にして自律的な幻とよりを戻し、何も学ばないまま時が過ぎたし、過ぎるだろう。予測は外れることもある。事実として。要はそのようにまだ過ぎてもない時間と、実際に過ぎた時間との兼ね合いで何かが起こっていて、いや実際には何も起こってはいないのだけど、過ぎることのない時間ともう過ぎてしまった時間が似ていると感じているこの時間が過ぎたあとで、これは流れることのないどの時間と照らし合わされるのだろうか。



 少年は思う。自分は彼女に対して何を話すでもなく、ただ推論とちょっとした狂気と隠喩により導き出された沈黙のなかで、ただこのように思考することだけを願っていたのかもしれない。もちろん、それはあるまじき行為だ。でもなにかをあるべきではないと言うのは、単にそこで検分されるべき尺度をもうひとつ付け加えるだけのことなので、真に少年がそのようにただ思考することを願っていたのだとして、それは単にそれだけが他の為すべきではないことの代わりに行われただけだとも言える。まあ別にそこまで捨てたもんでもないと思うが、と少年は言葉にしようとして、彼女に対してそこまでの前提を何一つ打ち明けていないことに気付く。そして、それは、もう一つのこんな希望に結びつく。かもしれない。そこまで捨てたもんでもないと思うが、といういかにも微妙な台詞を何の前提もなしにいきなりぶつけられた彼女が、実は、全部の辻褄の各種を理解しているかのように平然とうなずくのではないかという、希望と呼んではいけないそれは希望で、叶ってはいけない希望、それでもなお希望としてあり続けるもの。だから彼女がもしそのときにうなずくのならば、自分もまたうなずくことしかできない。それは、この場合においては、彼女が抱きうる希望と呼んではならない類の希望のなかでは最良のものだから。

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