nobody hurts

April 1, 2011

20110401 - silence (another april)

静寂と沈黙との会話。



 しばらく静寂がおりた。それが静寂だと気付くのに時間がかかったことにしたかったが、何だかそれは静寂というものを知らない人間が言いそうな文句だなと少年は思った。
 それは二三秒の静寂であったはずだ。それは曲間に挟まった無音の時間でしかなかったから。少年がいかに物事を拡大解釈しているかが見て取れる。
 静寂と、彼女と少年の沈黙がたまに寄り添うことがあり、その時には、場の静寂と二人の沈黙が会話しているように少年には思えた。二人が会話している、というわけではなく。



 静寂が続いた。静寂が、また続きを始めた。時間の長さというものが意味を持たなくなるほど長いあいだ続いている静寂のほうではなく、少年と彼女が共有しようと企んでいる静寂の方で、その静寂は少年と彼女のあいだの沈黙と流暢に会話をするともいう。
 あるいはその会話の内容が少年と彼女として表現されている。そのように表現されている。
 でも先にも言った通り、少年がここで静寂として取り扱っているのは、自分のプレイリストを降下していく再生曲と再生曲のあいだに挟まる二三秒の無音状態だ。



 静寂がまたおりた。静寂が落ちた。静寂は自らを語るすべを見つけようとしていた。その方法を見つけたからと言って、静寂による静寂についての語り、が実施されるかどうかはまた別のはなしだ。
 そんなことになったら、今みたいに、自分は静寂の代弁をしなきゃいけなくなる。彼女はそう考える。自分が静寂によって語られている内容だと思うと、幾つかの歯車が合う。だけど、そのことを少年には伝えなかった。比喩の妥当性を検討する必要はあるし、それに、少年はすでにそのことを知っているか、これから自分でそのことに気付くかのどちらかだ。
 そうでなければ、彼女はひとつの賭けにおいて時間をさかのぼって負けることになる。だが、彼女たるものがそのような賭けに負けたりすることがあり得るだろうか。



 静寂のなかで少年はその問いから自分を逆算して人の形を保った。ある程度は気味悪がられるのは分かっていたので、いちいちその解説を少年が彼女に対して行うことはなかった。
 彼女が賭けに負けるわけがあるだろうか。彼女に対する少年の妄信を差し引かないのならば、その問いに対する答えは、否、となる。少年は賭けの対象でしかなく、少年は彼女がその賭けに負けるとは思えない。
 だから、まだそんなに捨てたもんでもないと思うんだけど、と伝えようとして、そのことを伝える必要があるのならば、そのことはすでに共有されていなければいけないことに思い至る。



 静寂は、気まずさを誘うものではなかった。静寂それじたいが気まずそうにしていることはあったが、それは少年か彼女の目を通してのことだった。
 曲間の静寂を少年を膨らまして、彼女もそれを共有しているのだと少年は考えた。そのことを彼女が察してくれたらいいなと少年は願っていたが、それ以上甘ったれるというのも気に入らなかった。彼女がどう思っているのかは分からなかった。
 また、たとえ、彼女がそのことを察してくれていると言っても、実際にその静寂が共有されているのかどうかは別の話なのだと少年は気付いた。

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